研修旅行2023(3)

九州国立博物館:境界と空間の考え方


1、はじめに

九州国立博物館は、菊竹清訓氏が設計し、2005年に開館した日本で4番目の国立博物館である。全面ガラス張り、独特な屋根形状、3層吹抜けのエントランスといった近代的な特徴を持つほか、歴史的な展示物に倣い、日本の文化や伝統を象徴する木造りが見受けられる。それらの特徴から、私は「境界と空間の考え方」について着目しました。


2、境界について

建物全体に広がる、巨大なダブルスキンのガラス壁は、降り注ぐ自然光によって特徴づけられている。この壁は、エントランスに豊富な光をもたらす役割を果たしている。さらに、外観が周りの木々を反射し風景と一体化している。その効果により、内と外との境界が曖昧になり、建築物と周辺の自然環境と調和が取れている。豊かな自然との共存を意識した計画のもと、設計された建築物である。

   

▲外観写真(北西側)                ▲外観写真(南西 駐車場側)

3、空間について

チタン製の巨大な屋根の下に展示室を設ける二重構造を採用している。この設計により、紫外線をカットしながらも自然光を取り入れた巨大なエントランス空間と、光を自由に制御できる展示空間を作り出している。特別展示室においては、窓からの距離を考慮しながら、自然光の取り方を工夫して、明るい開放空間と安全な展示空間を両立させていることがわかった。また、エントランス空間は、日本の文化や伝統を象徴する木造りの例として、九州で集めた杉材や間伐材が使用されている。視覚的に興味深いパターンや質感を提供するとともに雰囲気を一層魅力的にする効果があると考えられる。

  

▲エントラス空間                  ▲天井材:間伐材


4、終わりに

「境界」と「空間」は建築デザインにおいて相互に影響しあい、環境を豊かにする重要な要素の1つである。九州国立博物館は、エントランスの光と影、展示室の自然光の取り方、そして天井の間伐材のデザインなど、空間的な細部へのこだわり、歴史と未来、内と外、自然と人工の境界をつなぐ手法など、「境界」と「空間」の考え方を巧みに取り入れた建築物であり、自然と調和しながら訪れる人々に魅力的な体験を提供している。
(日髙 諒也)

5、参考文献

 ・新建築 2006年2月号
 ・九州国立博物館 ホームページ