【竣工物件紹介】Villa Musica 西宮北口

今回のブログは今年の2月に竣工した「Villa Musica西宮北口」を紹介したいと思います。「音楽の家」の名の通り、この建物は音楽愛好家が集うための防音賃貸マンションで、実績紹介にも掲載されていますので、ご興味のある方は、こちらも見て頂けると幸いです。ここでは、本文に載せなかった設計中の話しを中心に書きたいと思います。オーナーは若くしてドイツに音楽留学をされ、長くヨーロッパを拠点に生活されている中で、人生の中心にあった音楽に関係する建物を、生まれた土地に建てたいと計画を温めておられました。以前に隣地でマンションを建てられたことがあり、そこで経験されたことや、その後に自身で勉強された結晶として、設計のスタート時点でオーナーの思いが詰まった平面スケッチがありました。今回の設計では、その平面プランを元にして、法規や構造、設備といった現実的な問題を少しずつ解決しながら、実際の設計に落とし込んでいくという方法で、進めていくことにしました。

構造設計ではプラン上、柱型が出ないように壁式鉄筋コンクリート造にしたいというオーナーからの要望がありましたが、3階建ての建物は店舗、音楽教室と11戸の賃貸住宅からなり、まったく同じかたちの住戸はありません。10mの高さ制限により階高さを低く抑える必要があるなか、音楽教室等、スパンが長い箇所もありましたが、共用部や住戸内で目立たないよう、壁梁のかけ方やデザインを工夫しながら何度も調整を繰り返しました。

オーナーのスケッチは、やりたいことを優先して自由な発想で書かれているため、通常のセオリーから外れたところもあり、苦労もありましたが、スケッチの意図を汲みとりながら整理しつつ、自分なりにデザインを解決していくといった、非常にやりがいのある設計作業でもありました。お客様の要求は、時には自分が思ってもいない場所へ連れていってくれます。オーナーこだわりの景色が望めるテラスに上がるための吊り階段、ランダムに開けられた窓、要求に対して頭をしぼりながら、自分の中にあるいつも開けない引き出しを、無理矢理開けてみると、自分も忘れていたアイディアに出会えることがあります。

今回はゼネコンへの設計協力といった形であったため、実際の工事については、その苦労を共にすることはありませんでしたが、かなり大変な工事だったと思います。建物を建てる場合、施主・設計者・施工者はバトンをつなぐリレーチームのように機能します。施工者はみんなの思いを受け取り、最終的にかたちに仕上げてくれる最終ランナーです。竣工した建物をオーナーが喜んでくれて、関係者全員が心底ホッとし、みんなで喜びを分かち合うことが出来ました。

 

▼家具まで細かく書き込みがされたオーナーのスケッチ。
 
 
 

 

▼サロン内の専用階段を上がると、オーナーが子供の頃から慣れ親しんだ山並みの風景が。

 

 

▼当初、規則ただしく並んでいた窓も打合せの中で、どんどんランダムな配置、大きさに。上階の壁の位置が天井面に梁として現れる。